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仙台高等裁判所秋田支部 昭和24年(を)193号 判決 1950年6月12日

被告人

西塔栄蔵

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

弁護人佐藤欽一の控訴趣意第三点について。

原判決の判示第二の事実中「他の選挙運動者に日当等として供与し、又はその他に使用させる目的で現金四万円を交付し」とあるのは所論のとおりその意義が必ずしも明瞭ではないが、原判決が証拠として挙示する被告人に対する検事作成の第一囘供述調書中に同人の供述として「日当」とは要するに暇をかけて選挙運動をしてくれるのでその意味の報酬をやる意味である旨の記載があることよりこれを報酬と解すべく「その他に使用させる」とは候補者の当選を得しめる目的を以て選挙運動をなすことに対するものであることは判文上明かで、所論のように選挙運動者の車馬賃宿泊料を包含するものと解されるのであるが、右のように報酬と実費とが、区別されることなく供与された場合にこれを判示のように表示しても違法であるとはいえないから原判決には所論のような違法はなく論旨は採用し得ない。

(弁護人佐藤欽一の控訴趣意第三点)

第三、前審判決判示事実全部が有罪なりとしても該判決には理由不備の違法がある。

前審判決は第二事実に付て「他の運動者に日当等として供与し又は其他に使用せしむる目的で金四万円交付し」と判示して居るが事実の判示方としては不備である即「日当」とは運動報酬の意とは直ちに解し兼ねるのみならず労務者に対する日当の如く正規に認められたものもあり又普通「日当」と云う場合宿泊料等の実費を指す場合もあるのであるから右の如く単に「日当」と判示してもそれが犯罪の構成するものなりや否や不明である。又「其他に使用せしめる目的」と判示して居るが之亦「其他」とは如何なるものを指すのか不明である、所謂買収費を意味するのか単に運動報酬を意味するのか将又運動者の車馬賃、宿料等の実費を意味するのか或は選挙に関係ない出費を意味するのか不明である、若し正規に支出し得る実費乃至選挙に関係ない出費を意味するとしたら犯罪は構成しない筈である。結局「日当」の意味「其他」の内容が判然しない以上果して犯罪を構成するや否や又何罪を構成するのか不明であつて判決は其理由不備であり刑事訴訟法第三百七十八条第四号により破毀を免れざるものと思料する。

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